【ノスプロ講座7】サイズ・ゆとり量・採寸について

【服の持つ「ゆとり」】 Written by パタンナー
《はじめに・・・》
服のサイズ選び・・・実店舗を持たぬネットショップでは「実物を見られない、触れない」「試着が出来ない」という不安があります。
かなしいかなNO.Sもその例外ではありません・・・
「どっちのサイズにしようか悩んでいます」といったお問い合わせやその他「サイズに関する悩み」・・・今回は、少しでもその不安を解消できないだろうか・・・と考えて「サイズ選び」に関わるお話をさせていただきます。

「着用感」という言葉がありますよね。「服を着た時の具合い、着心地」とほぼ同じ意味です。
服を着用したときに感じる「ピッタリ具合い」「ゆったり具合い」・・・ここに「好み」が加わってきて、大変な個人差が生じます。

さらには同じ人であっても、デザインやテイスト、この服はピッタリ目に着たいけどこっちの服はゆったり目に着たい・・・とか。本当に個々で様々です。
これを第三者に伝えようと思うと困難を極めます。
店員さんがソコにいて、その場で試着出来て、その場で相談できる・・・という訳にはいかないので「問い合わせ」という手間と時間をいただいてしまう形になってしまいます。

しかし!!とにかく投げかけてさえいただければ、まずはウチの店長がしっかり拾い上げ、必要なメンバーに声をかけてくれます。
ホントに熱心ですよ、うちの店長・・・場合によっては体にタオルなりなんなり巻きつけて「お客様の寸法」を作った上で着用感を試してみたり・・・
レスポンスも人それぞれ・・・われわれの解答内容を受けて、吟味するための時間も必要かと考えて、こちらからの検証、検討、解答はとにかく「極力迅速!」を心がけて対応させていただいています。
問い合わせ内容に必要な情報をこちらで相談し、ご希望にそえるよう誠心誠意務めさせていただきます。

服の場合、このとき必要になるのが「ヌード寸法」「好み(希望)の着用感」の情報です。
アイテムやデザインによって、必要な寸法が違ってきます。

と、なった時に自分の体の各部の「寸法」ってご存知ですか?
女性であればスリーサイズ(バスト、ウェスト、ヒップ)は記憶しているかもしれませんね。

しかし、他にも把握しておいた方がいいのでは?という寸法があるんです。
問い合わせをするにしても「2年前の寸法です」と言われても、きちんとした答えにたどり着けませんし、「スリーサイズを服の上から測ってました」と後から言われることもありますが、ヌード寸法でなく服の上からのサイズでは、正確な着用感のご案内ができません。
「正確に把握していていただきたい」と、少なくとも私は考えています。

服は・・・平置きよりもハンガー。ハンガーよりもトルソー。トルソーよりも人。
服作りで、私が常に意識しているのは、「人が着て動いた時」に一番美しく見えるという事です。
動く人が着用してこそ服の美しさが最大限発揮される。そんな服を着ることでご自身も美しく見える。相乗効果です!
「着用感」についてはまた次の項目でお話しさせていただきますが、まず「ヌード寸法」の確認をおすすめします。

《採寸》
先ずはご自身の「ヌード寸法」を把握する。極力、直近の「寸法」をお願いします。

ということで、私(男です)が試しにウェストを測ってみました。
ヌード状態で73cm(おなかを膨らませて75cm)
に対してカットソー(Tシャツですね)を着た上から測って78cm~79cm
ということは厚手ではないにしてもカットソーの上から測っただけで4cm程度は平気で変わってくる、ということです。
さらに言うと、ピタッとした薄いTシャツの上からなのか、フィットしていない少し厚みのあるTシャツの上からなのか・・・これだけでもその誤差は変わってきます。

私どももプロですから、正確に申請していただいた「寸法」に対して「好みの着用感」(次項目で)を加味して真剣に考えます。
ご希望にお応えできるよう日々向き合っていますので、「寸法」を測るときはぜひとも正確な「ヌード寸法」でお願いしたいです。

もちろん可能な範囲で構わないです。正確に測ろうと思うと「測ってくれる人」が自分以外に必要ですから。
環境的にどうしても無理な場合は・・・正確さには欠けますが「この服の着用感が丁度いい」と思う服の寸法を測って商品ページのサイズ表と比較してみるとか・・・
正確に寸法を測ってくれる人に協力していただけるなら、是非じっくりと採寸してみていただきたいですね。なにかと役に立つと思いますよ?

B(バスト)、W(ウェスト)、H(ヒップ)のスリーサイズはもちろんですが、身長、袖丈、背丈、股下・・・
デザインによってはアンダーバスト(「リボンプリーツワンピース」)、二の腕周り(「ゴシック調ブラウス」)、手首回周り、ふともも周り、股上・・・様々な各部寸法が判断の基準になっていきます。

ボトム系(パンツやスカート)はともかく、肩のあるモノであれば肩幅はサイズ選びにとても重要な要素です。
服は肩からぶら下がっていますからね(「ナポレオンカラーロングコート」など)。
「洋服は肩で着る」と言われるくらいですから、肩幅はスリーサイズに並んで把握しておきたい寸法の一つです。

≪ 肩幅の正しい測定方法 ≫

[gallery columns="1" size="large" ids="3118"]

参考までに・・・

[gallery columns="1" size="large" ids="3105"]

注:CF(センターフロント)前中心線
CB(センターバック)後ろ中心線
FNP(フロントネックポイント)前中心の首の付け根
SNP(サイドネックポイント)脇の首の付け根
BNP(バックネックポイント)後ろ中心の首の付け根
BP(バストポイント)胸の一番高い点
SP(ショルダーポイント)腕の付け根、腕の骨の始点

[table id=3 /]

《ゆとり》
まずイメージしてみて下さい。
自分のヌード寸法に対してピッタピタのウェットスーツ(サーファーが着ているような)。究極は自分の皮膚がソレにあたりますよね。
ではその皮膚が全く伸び縮みしなかった場合、人間は動けるのでしょうか?指一本すら動かせなくなるでしょうね。皮膚やウェットスーツは伸縮するから自由に動けます。
皮膚は極端すぎるかもしれませんが、仮に自分の身体から全く離れていないピッタリの服を着たとすると動けないんです。
落としたものを拾うことすらできませんし、座ることすらできません。

服を作る素材である布が、ニット(=編み物)やストレッチ素材(=ゴム糸を含む織り物「ノスプロ講座3-ポリエステル-混紡・交織の項)であるならまだしも、
ほとんど伸縮性がない布帛(ふはく=織り物)ではピタピタの服には限界があります。
この「ピタピタ感」が「着心地」に直結してきますし、好みによりますがあまりにも動きづらいモノ=「着づらい」に直結するのではないでしょうか。
やはり、「適度なゆとりで動きやすくて着心地がいい」というトコロに落ち着かせたいものです。
これが「着用感」といわれる部分ですが、こればかりは好みやボディバランス、アイテムやデザインで個々に違う訳なので、考え方の参考としてのお話しです。

[gallery columns="1" size="large" ids="3108"]

数字も図形も随分と簡略しましたが、「どこをみても自分の身体から1cm離れている=6cm程度のゆとり」ということになります。
この考え方でいうと
「どこをみても自分の身体から1.5cm離れている= 9cm程度のゆとり」
「どこをみても自分の身体から2.0cm離れている=12cm程度のゆとり」
「どこをみても自分の身体から2.5cm離れている=15cm程度のゆとり」
が、目安になっていきます。

「着用感」にも好みや感じ方の個人差があるので一概には言えませんが、私の経験上、下記のように考えて判断基準にしています。
ゆとり 6cm~ 8cm=ぴったりフィット目の着用感
ゆとり 9cm~11cm=程よいくらいのゆとりが入った着用感
ゆとり12cm~14cm=ゆったりルーズ目の着用感

デザインやアイテムにより加味しなくてはいけない要素はありますけどね・・・
(ピッタリ目の方が明らかに美しいハイウェスト部分「二次元と運命が交差するスカート」「バイオリンスカート」「ピアノスカート」「『乙女』のためのスタイリッシュベスト」「『乙女』のためのコルセット」など)

その他に、コートを着用する時期になると、それこそインナーに何を着用するのか重ね着具合いにもよりますので気をつけなくてはいけません。
その場合、インナーの上から測った寸法を参考にするのも手かもしれませんね。

今まで着用していた洋服の中で、「これ着やすいな」と思ったものを測ってみる。
そうすると、自分のヌード寸法に対して何センチ大きいモノが(この大きい分との差がゆとりです)丁度良く感じられているのかを判明させられるのでは?
自分のサイズを知ったうえで、「この服の着用感が丁度いい」と思う服の寸法を測ってみるのもまた把握するためにはいいですよね。

世の中で既製服と言われる「服」は文字通り、ブランドにより差はありますけど「データに基づく寸法、体型にゆとり分を加えた上で量産された服」なので大衆向けです。
自分のボディバランスがそのデータに近いのであればたいていの場合は違和感なく着用できるわけですが・・・
オーダーであればクライアントの「好みの着用感」を反映させたうえで服を作ることはできますが、そうではない「既製服」の場合、「元になるヌード寸法」とある程度の「許容範囲」が必要です。

[table id=4 /]

これはJISがデータをとってまとめたヌード寸法の表で、多くのアパレルがこの寸法に基づいてブランドごとの「ベース」を設定しています。
NO.Sもこの寸法を元に、デザインやアイテムによってゆとり分量を配分しています。
NO.Sの服は・・・全体的に「細身」というか「ゆとり少なめでタイトなシルエット」のモノが多いでしょうか。
「ゆとり多めで少しカワイ目」なのモノでいうと・・・「赤ずきんフレアショートコート」「フローラルレーストップス」「セーラーカーディガン」ですかね。

《変動する寸法がある?・・・人間は動くし、生きてますからね》
特にウェストは立っている時と座ったとき、モノを食べる前と食べた後・・・のようにその寸法は平気で変わります。
もも周りや腕周りもそうです。特に関節部(膝や肘)を曲げた時と伸ばした時でかなりの寸法差が生じます。
『乙女』のための乗馬風パンツ」は膝周りも着用の際に関わってきますから意識しないといけません。

これは少し違う話。体質によるのかもしれませんが、体重の増減と一緒に、バスト寸法も変動するとか、ウェスト、ヒップの寸法が変動しやすいとか・・・これも様々ですね。男性はともかく女性ではよく聞く話です。
ちなみに私のウェストも73~78cmの間で日々目まぐるしく変動しています・・・

そのことを意識した上で「寸法の変動が激しい」など伝えていただけると、こちらとしても、集めるべき情報の判断や考えるための情報が充実し、よりご希望にそった解答につなげられると考えています。

そろそろシメに入りますので、その前に一つ余談ですが・・・
試着できないカットソーを買うときに私はどうしているかという話。
カットソーは胸周りが「程よいゆとり」でないと二度と(・・・そんなことないか)着ないのでソコはチェックします。
私の手は、広げて親指から小指までが大体20cmなんです。カットソーを広げてピタッと平置きにして、カットソーの脇の下から脇の下まで(=胸周り)広げた手を当てます。
「手のひら2.5個分(=50cm)、前身頃と後身頃で倍の100cm」これで胸回りの私の好みのゆとり(8cm前後?)が確保されているわけです。自分の体のどこか使いやすいところを「定規」にしておくと何かと便利です。
ホントに余談でした・・・

計算式を書いている時は、自分でも「何の話をしているんだ?」と思いましたが・・・どうでしょう?なんとなくでもイメージは伝わったでしょうか?
何はともあれ、まずは自分の「ヌード寸法」を把握してあげること、デザインやアイテムによって「必要なゆとり分量」があることを認識していただくことが「良い服選び」につながっていくのではないでしょうか。