【ノスプロ講座2】素材(マテリアル)について ~ウール・コットン編~

~ NO.S PROJECTと一緒に学ぶ”ノスプロ講座” ~ Comment by 店長

NO.S PROJECTと一緒に学ぶ”ノスプロ講座” 先生役は開発メンバーのパタンナー。
8年のパタンナー経験に加え、服飾専門学校で15年の教鞭をとっていた経歴の持ち主。
授業料を払わないと学べないような専門知識まで「知るともっと好きになる」お話をお伝えして参ります。

「知ることで、新しい楽しみ方を見つけて頂けたら」「知ることで大事なアイテムを更に大切にして頂けたら」との思いが、ノスプロ講座の原点です。
第一回目の導入編では、主な素材のおおまかな種類についての紹介でした。
第二回目となる今回はウールとコットンの素材の特性についてのお話です。

【主要繊維の特徴】 Written by パタンナー
《ウール》

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まず、天然繊維の中でも使用頻度の高い「ウール」(=羊の毛)について。
どの素材でもそうですが「ウール」と言っても色々な「表情」の「ウール」があります。羊の種類や、羊の毛を糸にするまでの工程や加工の違いで「表情」に差が出ます。
毛足の長い「紡毛(ぼうもう)素材」と毛足が短く布面がフラットな「梳毛(そもう)素材」。
印象がかなり違いますが、「ウール」は大きく分けてこの2種類。

紡毛素材=厚みがあり、モコモコしている、毛足が長い(毛並みがある)嵩高(かさだか=フカッと厚みがある)なウール素材。
厚みはあるがソフトな柔らかさを併せ持ち、保温性が抜群!表面効果による「表情」が特徴。
比較的、ジャケットよりもコートに使用されることが多い。
生地の名前でいうと、ツィード(有名ですね)、シャギー、モッサ、ビーバーなど

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梳毛素材=長く、細い繊維を使って生地にしているので一見「ウール」?と思ってしまうような光沢のあるものもある。表面に毛足はほとんどなく、フラットでクールな「表情」を持つ。

厚みは中肉より若干薄めだが「ウール」なので保温性が高い。表面がフラットなので、シルエットや、切替線(縫い目)を美しく見せられる。
使う繊維により出来上がる生地の風合い(=生地の持つかたさや柔らかさ、厚みや薄さ、織り糸の密度による生地の雰囲気や「表情」の事)に差が出るが、柔らかくフレアの表現に向く生地や、比較的ハリがあり、カチッとしたディテールの表現に向く生地をデザイン、テイストによって使い分ける。

比較的、コートというよりは、ジャケットやワンピース、スカート、パンツなど多くのアイテムに使用される。
ギャバジン、サージ、トロピカルが生地としては有名です。

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ウールの長所
保温性が高い(防寒機能が高い)
吸湿性に優れる(体から発散する“湿気”を適度に吸ってくれる)
染色性に優れる(発色性が良い=色に深みがあるモノが多い)
適度な柔らかさを持つ生地もある(フレアが美しい)
適度なハリ、コシを持つ生地もある(かっちりしたデザインに向く)

 

「ウール」はその特性上、基本的に秋冬に使用することが多く、コート地やチェックの柄生地(どうしても「ウール」でのセレクトが多くなってしまいます)、パンツ(今で言うと乗馬風パンツとか)の生地を、時期が来ると仕入れに出向く感じです。
これがまた見つからないことも多く、生地を見つけること自体がひと仕事です。(^^;)

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《コットン》

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そして、天然繊維の中で次に使用頻度の高いのが「コットン」です。が、NO.Sでは珍しい方かも・・・
われわれが「コットン」を選ぶケースは、ニット素材のカットソーや、ある程度のハリを必要とするデザインなど、やはり「コットン」特有のざっくりした風合いが必要なデザイン、ナチュラルな風合いを活かしたいデザインの時でしょうか。

「コットン」の繊維は特有の縮れがあり、ピーンと伸びた形状ではないので(たとえば、ティッシュペーパーをちぎった時のちぎり目に、よ~く見ると繊維らしきモノが見えます)、なんとも表現できない「コットン」ならではのヨレッとした、ナチュラルな風合いに出てきます。
「コットン」は植物繊維で、繊維の中に特有の「空洞」を持ちます。例えるなら「柔らかいストロー」のような構造です。
この「空洞」が「コットン」の特徴を決定づけます。
生地でいうとブロード、ローン、デニム(コレはあまりにも有名ですよね)、カツラギなどなど・・・
【コットンの長所】
保温性が高い(空洞に空気をためることが出来る)
吸水性に優れる(空洞に水分をためることが出来る)
染色性に優れる(空洞があることで染料に触れる表面積が増える)
特有のナチュラル感を持つ(この風合いは繊維が縮れているため)
適度なハリがあり、丈夫(中にはヨットの帆に使用されるものも・・・)

 

無地の「コットン」をセレクトすることは少なくて、ミリタリー系のデザインが上がった時ですかね・・・「柄の生地」としては、仕入れに出る度に意識して見るようにしています。
ディアンドルワンピースの系統にはまるようなプリント柄・・・となると「コットン」のプリント生地が比較的多いです・・・

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プリント柄は実際の生地を見てみないと本当にいいかどうかのジャッジが出来ません!
その場で生地を広げてみて、柄の配置や色目、全体のイメージ、テイスト・・・
「NO.Sのイメージにパシッとはまるかどうか」がかなりの比重でセレクトの基準になっています。

次回、シルク・ポリエステル編に続きます。

前回:【ノスプロ講座1】素材(マテリアル)について ~入門編~
次回:【ノスプロ講座2】素材(マテリアル)について ~シルク・ポリエステル編~

~ あとがき ~ Comment by 店長
ウールとコットンのお話、いかがでしたでしょうか。

皆さまのワードローブに"コットン"や"ウール"のお洋服はありますか?
お洋服の好みにも因ると思うのですが、品質表示を見直してみると、新しい発見があるかも知れません。

私も気になって、自分のワードローブのお洋服の品質表示を調べてみました。
すると、持っているシャツ・ブラウス15着のうち、約半分がコットン100%、あとの半分はポリエステルとの混紡でした。
思い返してみると、コットンのブラウスは皺になりやすく、着用後はクリーニングに出しています。
ポリエステルが入っているものはやや皺になりにくいものが多いように感じました。

他にも、コットン素材が多かったのが春夏のスカートです。
楽に着られるロング丈のスカートを沢山持っているのですが、その多くがコットン100%でした。
母が若い頃に着ていたスカートを譲り受けたものが多く、合わせるともう三十年以上着用していますが、未だに色褪せず、まだまだ現役で活躍しています。

それを思うと、コットンは丈夫で長持ちする素材なんだ、と改めて素材の特性の良さに気付かされました。

ただ、コットンも本当にピンキリなので・・・
何年も着られる、手入れのしやすいコットンとなると、質の良い繊維で作るコットン素材になってしまい、
当然のようにお値段が・・・と考えると、販売側の視点での葛藤が生じます。

次回「シルク・ポリエステル編」も合わせて目を通して頂き、
着用後、お洗濯やアイロンなどお手入れの部分まで含めた、各素材の特性を一緒に学んでいければと思います。
次回の更新をお楽しみに!